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インセインリプレイ『最後の願い』

クライマックスフェイズ

願いの行方

アリス:ところで、このままだとハロルド氏は『穢れた生命』の効果でバッドエンド表行きになりますよね。

GM:そうですね。

アリス:ただ、バッドエンド表を見るとこれ、ことによると……バッドエンドの結果次第でハロルド氏、助かるのでは?

シャロン:うん、それは思う。

アリス:それとも、不完全だから最終的に腐ったりしちゃうわけ?

GM:さぁ、バッドエンド表の結果によりますね。表の結果とその解釈によります。出目次第ですね。

アリス:これ、12以外じゃ即死しませんよ。何かしらおかしなことにはなりますけど、4とかわりとありかと。

GM:まぁ、4が出たとしてもこの世界で生き続けられるわけではないっていうのがわりと効いてくると思いますので、それで収支マイナスでということで。

アリス:私は、『最後の願い』を使わずに、ハロルド氏をバッドエンド表送りにして、それなりに生きていてもらうのもありだと思い始めた。

シャロン:私はそれでいいと思う。生きてればやりようもあるし。

エリオット:まぁ、他にいい手もないし、それでいいんじゃないですかね。

シャロン:個人的には、それに加えて『猿の手』を消滅させたい。消滅させないと後に禍根を残しますし。

GM:『猿の手』の消滅自体は、適当な事を願えば消えるでしょうね。願いを全て叶えたら灰になってしまうので。

シャロン:じゃあ、やっぱり『猿の手』を消滅させて、ハリーにはバッドエンド表を振ってもらう案を押す。

アリス:まぁ、ハロルド氏は苦しむかもねー。本人は事実知ってるわけだし。自分で提案しておいて何だけど。

エリオット:ていうか……バッドエンド表に従ったところで、体が崩壊していってるのは変わらないんじゃないの……。

シャロン:バッドエンド表に従うらしいので、生還引いたら後は演出次第かもしれない。

エリオット:生還って言っても、バッドエンド表による悪いイベントからの生還であって、『猿の手』の代償が足りなかったペナルティは消えないよな?

アリス:どうなんですかね、今のハロルド氏の状態って。

GM:んー、代償が足りないがゆえに歪んで叶えられてしまってる状態ですね。

アリス:完全に復活してるわけではない?

GM:そういうことです。生と死が重なりあって、どっち付かずになっているような状態です。

シャロン:でも……魔術的アイテムが『猿の手』だけとは限らないんですわよ! 私たちの知らない魔術で、ハリーを助けられないとは限らないわ!(狂気じみた目で)

エリオット:あー、そういう見方もありますね。

アリス:つまり、運に任せてハロルド氏を生還させて、その後、彼を完全復活させられる魔術アイテムを探しに行くルートということか。

シャロン:私としてはそのルートですね。

エリオット:それでいってみましょうか。姉さんの意志を僕は尊重しますよ。

アリス:じゃ、『猿の手』は消滅させる。そして、バッドエンド表の結果で生き残るよう祈りつつ、ハロルド氏はその後の人生を、本当に復活できる魔術アイテムを探しに行くとかの希望を持って生きてもらう。

GM:とりあえず、シーンを作っていきましょうか。

エリオット:じゃあ、『猿の手』を持ってるのは現在のところ僕なので、僕の部屋に集まるのはどうですかね。

アリス:きっとシャロン様は家にいるでしょうし、私だけ合流すればいいですかね。

シャロン:あー、私はアリスとエリオットが会話してるところに現れたいです。

エリオット:了解です。

シャロン:部屋はどんな部屋かな。几帳面に整理整頓されているけど、所々に隠しきれない黒歴史グッズがあるようなお部屋?

エリオット:医学書とか雑多な書籍が並ぶ殺風景な部屋ですよ。

アリス:あ、ところで頼みがあるんだけど、『猿の手』を処分するのは私にやらせてくれませんかね。別に悪いことには使わないんで。

エリオット:いいですよ。シーン中に渡します。

アリス:ありがとうございます。じゃあ、まずは私から部屋に……「アリス・ミラーでございます」 ドアの向こうから声をかけます。

エリオット:「どうぞ」

アリス:「失礼いたします」 いつもと変わらぬ様子で部屋に入ってくると、再び一礼をして「『猿の手』をどうするか、決まりましたか?」と聞きます。

エリオット:「……えぇ」

アリス:「それは良かった。もっとも、どのようにするにしても、私があなた方を『猿の手』から守るつもりですので、そこはご安心を」 ステッキで床を叩きながら。

エリオット:「ありがとうございます。あの呪物をどうしたものか、1晩考えました。件のルールを逆手に取る方法はないかとか、代価となるものを別の形で補完することはできないか、とか……でも、妙手は思いつきませんでした。無知無学が悔やまれるます」

アリス:「私は魔術については多少の心得がありますが……情けないことに、『猿の手』の厄介さには舌を巻くばかりです」

エリオット:「姉を想えば、最後の願いはミラーさん、あなたが仰ったとおり。ハロルドさんの消滅……その願いに充てるのが順当でしょう。あるべき眠りに付き、この件は不幸な事故として葬られる。単純ですが極めてデメリットの少ない手だと想います」

アリス:「ごもっともです」

エリオット:「ですが……僕にはとても言えません。最愛の姉に対して、姉の最愛の人の死を願えなんて……僕は、不出来な弟ですから」 俯いて床を見る。

アリス:私はエリオット様の方を見ずに、窓の外を見ながら話を聞いていましょう。

シャロン:では、そんな陰鬱とした室内に突然、似つかわしくない騒音が聞こえてくる。それはだんだん部屋へと近づいているようで……“ドーン!”と部屋の扉が開くと「ヘイ! エリオット! レンドミーユアウィズダム!」 扉を開けた私の肩には何故かスコップ。

GM:まだ持ってるのかよスコップ!

アリス:捨てろよ!

エリオット:何してんだよ!

シャロン:勘が告げている。このあと役に立つと。

エリオット:「なんです、そのスコップは……まあ、いいでしょう。僕も姉さんに話があるんです」

アリス:ここは、私は黙っていましょう。

シャロン:「エリオット! と、丁度いいところにアリス! ん? 話って何かしらエリオット!?」 やたらハイテンションである。

エリオット:「単刀直入に伺います。ハロルドさんは今、非常によくない状態にあります。それはご存知ですね?」

シャロン:「知ってるわよ? 看病した私から見ても、死に掛けてるのは……いえ、元々あの状態だったかもしれないけれど」

エリオット:「……黙っていましたが、姉さん。件の『猿の手』は、現在僕が管理しています」

アリス:まぁ、シャロンが勝手に行っちゃっただけですけどね。

シャロン:「そう、それで?」

エリオット:「この『猿の手』と、最後の願いについて、その処遇を姉さんに任せます。これは……姉さんとハロルドさんが決着をつけるべきもので、僕にはどうしようもありません……」

シャロン:「そう? じゃあ……そんな辛気臭い手はさっさと捨て、いえ破壊しましょう。訳のわからない木乃伊に構ってる時間はないわよ!」

エリオット:「……よろしいですね?」

アリス:「……お待ちください」 振り返らないままに声をかけます。

シャロン:「どうしたの?」

アリス:「破壊するとして、ハロルド様はどうなりますか? 彼は生きているのか、死んでいるのかわからない、そんな半端な存在になる。……まともに生活ができると?」

シャロン:「そうね、できないわね。だから……」 すっと大きく息を吸って「これからその状況を打開できる魔術の道具なり、方法を探すわよ!」

エリオット:「……」

シャロン:「『猿の手』なんて訳のわからない代物があるんだから、他のオカルト的な代物だって、あるわよね?」

アリス:「どうでしょう? 私は聞いたことがありませんが……。それに、ハロルド様は、そのような道具を探すほどの希望をお持ちでしょうか?」

シャロン:「希望が持てないなら、私が持たせるわ。この私が!」 無駄に自信満々で胸を張る。

アリス:「……結構! その言葉を信用しましょう!」 振り返って、シャロンにニヤッと笑ってみせる。

シャロン:「よろしい。じゃあまずハリーの説得からね、殴りこみに行くわよ!」 そう言って部屋から出て行くよ。

エリオット:「すいませんね……姉はこういう人なんですよ」

アリス:「いえいえ、素敵な姉上です。シャロン様、あなたの願いのために、私も微力ながらご協力いたしましょう」

エリオット:「はいはい……ああ、アリスさん」

アリス:「何か?」

エリオット:「これを。僕なんかよりよほど、あなたのほうが上手く処理してくれそうだ」 『猿の手』を差し出そう

アリス:「そこまで信頼していただき、ありがとうございます。必ず、忌まわしき『猿の手』をこの世から葬りましょう」

GM:ではアリスに『猿の手』が渡ります。ハリーに会うとして、どこに行きましょうかね。

シャロン:シーン表振ろうか(コロコロ)……“少し疲れてしまったようだ。落ち着ける場所でひと息つきたい”。

GM:疲れすぎ。

アリス:ひと息つきすぎ。

GM:じゃあまた墓地でいいですかね。落ち着けるかどうかはともかく。3人が墓場に行くと、ハリーは父親の墓の前で一人佇んでいます。墓は明らかに掘り起こされている……。

シャロン:「見つけましたわ! ハリー!」 無駄なハイテンションでやってくる。

GM(ハリー):「……これはこれは、お揃いで」 振り返った視線は刺すように冷たい。

アリス:帽子を少し上げて仕草だけで挨拶します。

エリオット:黙っている。

GM(ハリー):「誰が持ってる? しらばっくれるなよ、『猿の手』だ」

アリス:随分、粗暴になったな。追い詰められている。

シャロン:そんな視線をまるで感じていないかのように、余裕の笑みを浮かべ「ふん、あんな代物、ダーリンには必要ありませんわ。」

GM(ハリー):「わからないな……なぜこんな仕打ちを? 僕がなにか悪いことをしたか? 君が持っているのか、シャロン? 僕を愛しているというなら、大人しく渡してくれないか?」

シャロン:「渡す気はありませんわ。……何故なら、私があなたを愛しているから愛しているからこそ、あんなものに頼らず、あなたを治してみせるからですわ! だから……目を覚ましなさい、ハリー!」

GM(ハリー):「……はぐらかすな!」 叫んで、シャロンの襟首を掴みあげようとします。

アリス:では、その手をステッキではたき落とし「婦女子に手を上げるのは紳士ではありませんよ?」と言ってニヤッと笑う。

GM(ハリー):「僕には時間がない」 (コロコロ)……9。

9:ハロルドの姿に重なりありえないものを幻視してしまう。干からびヒビ割れ、身体の歪んだ死体だ……。シーンプレイヤーは《拷問》で恐怖判定を行う。

エリオット:なんかきた。

GM:今回は特別に、シーンプレイヤーだけでなく全員に恐怖判定してもらいますね。

アリス:いらないサービス!

シャロン:《におい》から(コロコロ)……9で成功。

GM:ハリーも《手触り》で(コロコロ)……10……成功(顔が曇る)

シャロン:エリオットは感情修正いる?

エリオット:あっても失敗する勢いでヤバい。というわけで、(コロコロ)……9。目標値11だからなぁ。失敗だ。

アリス:私は目標値9でなかなか厳しいが……奇跡的に成功(コロコロ)……3、しなかった!

GM:引いとけ引いとけー。

アリス:引いたー……はい、そこで!

GM:そこで?

アリス:【狂気】発動!

【かんしゃく】
トリガー:同じシーンにいる誰か(自分も含む)が判定に失敗する。
何かイライラする。小さな不満が積み重なり、爆発しそうになる。いらいらいらいら……。自分の持っている好きなアイテム一つを消費する。アイテムを消費できない場合、自分が1点のダメージを受ける。

エリオット:キレないでよ!

アリス:私だってキレたくなかったよ! 「武器」1つ消化します。もったいねー。

シャロン:まあその【狂気】戦闘中確実に発動するからしょうがない。

アリス:とにかく演出を……「まぁ、あなたの焦りももっともですが……」と言いながら、ステッキの両端を持つと……バギッ。

GM:つ、つえええ。

アリス:「女性、それも私の依頼人にに手を挙げようとする人間には、私は実力行使でいくことにしています……おっと、ステッキが1本無駄になってしまいました」 ニヤッと笑うその顔には、怒りがにじみ出ている。

シャロン:私はスコップをガンと地面に打ち付けて戦闘準備を整える!

エリオット:袖口からしゅっと、細身のナイフを両手に抜こう。

アリス:じゃ、私は折れたステッキを捨てて「新しいのを取りに行ってる暇は、ありませんね」と握り拳を作ります。

GM:みんなこわっ……では戦闘、始めますか。今回の戦闘は猛攻のルール(速度が最も速かったキャラクターが複数回攻撃を行うことができるルール)を採用しているので注意してくださいね。では、プロットをしてください。……できましたね。それでは、公開してください。

速度6:アリス
速度4:エリオット
速度2:ハロルド
速度1:シャロン

GM:最初の手番はアリスからです。アリスには猛攻の権利があるので、2回攻撃ができますよ。

アリス:じゃ、さっそく【武術】使います。当たらないと意味ないんだけどね(コロコロ)……6で成功。まずはよし。

GM:では回避しますね。6以上で避けられる(コロコロ)……5、マジかよ終わったわ。

アリス:さっそく「武器」を消費して【武術】の効果を使います。さーて、ダメージは(コロコロ)……出目が2で、【武術】の効果で+2、さらに【狂気】の顕在化で+1して……ダメージは5点かぁ。とりあえず、横っ面を拳で殴ります。

GM(ハリー):「ぐっ……」 無様に転がる。

アリス:そして、猛攻の効果で《魔術》による追撃(コロコロ)……7。成功!

GM(ハリー):「お守り」で振り直しを要求する!

アリス:ここで切るか!(コロコロ)……5! 成功!

GM:ワンモアチャンス! 「お守り」をもう1枚切る!

アリス:こいつ、さてはもう【生命力】がないな!?(コロコロ)……10! 成功!

エリオット:絶対殺すマン(笑)

GM:そうか……回避は(コロコロ)……10! 成功! よっしゃあ!

エリオット:うおっ

アリス:シャロン! 「お守り」!

シャロン:いや、【連撃】を持ってるエリオットが感情修正を受けて攻撃したほうが確実だと思う!

アリス:じゃあ、回避成功してもらうか……「ちっ、やはり普通の人間とは違いますね!」 ……ん、ちょっと待って下さい……あっ、狂気カードのトリガーを引いてしまった。

【血への渇望】
トリガー:自分が誰かにダメージを与える。
あなたは思う存分、残虐に振る舞いたいと思っている。この【狂気】が顕在化したシーンに登場している自分以外のPC全員が、暴力の分野からランダムに特技1つを選び、恐怖判定を行う。

シャロン:ちょ(笑)

エリオット:なにしてんだおい!

アリス:てへっ。

GM:じゃあ暴力分野選びますね(コロコロ)……《緊縛》ですね。ハリーは《手触り》で判定を(コロコロ)……7で失敗です。

シャロン:《におい》から9(コロコロ)……5で失敗……。エリオットには【生命力】使って感情修正しておきます。

エリオット:ありがとう姉さん(コロコロ)……13で成功、よぉーっし。

GM:ちぇー。ロールをどうぞ。

アリス:では、殴った手を確かめるように開いたり閉じたり……

アリス:「ふむ、やはり人間とは違う手応えですね……」と言ってふと気がついたように「そういえば、彼はどんな血を流すのでしょうかね?」 そう言って折れたステッキを拾うと……折れて鋭利になった方を上に構え、ニヤッと笑う。

シャロン:「ちょ、ちょっと、ハリーは私のものよ! 勝手に殺さないで頂戴!」

アリス:「くくっ、冗談ですよ、冗談。でも、彼のことはこれから詳しく知らねばなりませんからね。彼を完全に復活させるのでしょう?」

シャロン:「ええ、何だかよく分からない木乃伊から出た怪物如きに、私の婚約者を奪い取られたままなんてありえませんわ!」

GM:と、とりあえずエリオットの番にいこう。

エリオット:では……《刺す》で攻撃を(コロコロ)……7。成功です。

GM:《埋葬》から(コロコロ)……7で成功!

エリオット:指定特技《刺す》で【連撃】!

GM:(コロコロ)……5で失敗。まあ、そうなるな。

エリオット:大振りにした右のナイフが、ハロルドさんの注意を引く。かわした……とハリーが確信した次の瞬間、左の袖口から輝く刃が、大腿部を貫いた。

シャロン:心配そうに見るけど、止めない。ここで止めて『猿の手』を使われては意味が無いからだ。

エリオット:そして、ダメージを(コロコロ)……3です。

GM:それでは、ハリーは倒れます……殺すことも可能ですが、どうしますか?

エリオット:「……動脈筋肉その他主要な部位は傷つけておりません」 殺しはしません。

シャロン:「さすがエリオット!」

エリオット:「痛みはあるでしょうがね。僕からのプレゼントです。お納めください」 吐き捨てるように言います。

GM:では凶刃から逃れようと砂を掻いたが……ぱたりと意識を失う。ここで終了とするなら勝者を決めて下さい。

シャロン:「じゃあ後はまっかせなさーい!」 2人とも、戦闘から降りてくれないかな。勝者になってハリーからの感情得るだけだから、迷惑はかけない。

エリオット:……まぁ、いいですよ。

アリス:私もかまいませんよ。

シャロン:まあ、じゃあハリーから「愛情」で感情をもらうよー。

GM:ではとりました。気絶してるけど、「愛情」になる経緯はエピローグでやりましょう。

エリオット:ええ、ところでですね。僕、戦闘から脱落したことになるでしょう。

シャロン:はい。……ああ、うん。そういうことですか。どうぞ。

アリス:ん?

エリオット:それをトリガーに【狂気】発動します。

【失踪】
トリガー:自分が判定にファンブルする。もしくは、自分が戦闘で敗者になる。
ここは自分のいるべき場所じゃない。この【狂気】が顕在化したシーンが終ってから、2シーンの間、自分がシーンプレイヤーではないシーンに登場することができなくなる(マスターシーンには登場可能)。

アリス:え、失踪するの!?

シャロン:このタイミングで失踪(笑)

GM:まさかの(笑)

エリオット:中々だと思いません? あ、演出はエピローグに回します。

GM:では、倒れたハリーを中心にカメラがぐるんぐるん回ってフェイドアウトし、クライマックス終了です。

エピローグ

GM:さて、エピローグの前にバッドエンド表を振ってしまいますね。

シャロン:これがラスボスだ。

アリス:これで死んだら笑うよね。

GM:(コロコロ)……“目が覚めると見慣れない場所にいた。ここはどこだ? 私は誰だ? どうやら、恐怖のあまり、記憶を失ってしまったようだ”ということです。

シャロン:記憶消えたかー。まぁ、セーフセーフ。

アリス:あれ、これはどうなるの。完全に記憶を失ったけど、自分が死者であったことも忘れたのかな。

GM:自分が死んだことも忘れたんでしょう。

アリス:……これからこいつどうするんだろう。

シャロン:記憶が消えても生きていれば問題ないわ。また築けばいいのよ! 死んで失われるよりこれからの未来よ!

GM:とりあえず病院にでも連れて行って、目が覚めたら全部忘れていましたって感じでいきましょうか。

アリス:病院連れて行っていいの? 脈ないんじゃね?

シャロン:中途半端に復活してるだけだし大丈夫なんじゃない?

GM:そうですね。効果は半端ですが、完全な死人が動いているわけじゃありませんし。さて、誰からエピローグをやりましょうか

エリオット:失踪する都合上、最後らへんでいいです……。

アリス:じゃあ、私からやるか。

GM:それでは、アリスのエピローグから……。

エピローグ1 アリス

アリス:私は墓場での戦いの後「『これ』を処分しなければならないので、事務所に戻ります」と言って、一旦事務所に帰っていました。そして数日後、ウィンザー家に一通の手紙と小箱が届きます。

エリオット:その頃には、僕はもう失踪しているので、家にはいませんけどね。

シャロン:では受け取るのは私か「アリスからですわね。何かしら?」 手紙を開けましょう。

 拝啓、親愛なる姉弟へ。あれからしばらく顔も見せずに申し訳ありません。『あれ』の処分方法を見つけるのに少々手間取りまして。
 何しろ、燃やす、叩く、潰す、削る、溶かす。どれも効果はイマイチ。しかし、私は探偵。先日、『猿の手』をも滅ぼす特殊な薬を見つけることに成功しました。
 さっそく、使用したところ、『あれ』は青白い炎を上げて瞬く間に燃えつきてしまいました。その灰が小箱に入っております。証拠にお収めください。

エリオット:ほう……。

シャロン:何このうさんくさい文章。

GM:きっと、塩みたいな何かで破壊できる。

アリス:その後は“さて、それはそれとして、依頼の達成報酬の支払いについてですが……”とビジネスライクな内容が続きます。そして、最後に“追伸:シャロン様、あなたの弟君であるエリオット様は、いつもあなたのことをお考えでしたよ”と、締めくくってあります。

エリオット:おお……。

アリス:さらに【秘密】公開。

アリス・ミラー
【秘密】あなたはオカルト事件の専門家である。あなたは、ダミアンが『猿の手』という呪物を所有していたことを突き止めた。
「本物」の呪物など、ほとんど世に出回ってはいないが、なかには条理を捻じ曲げるほどの力を持つものもある。
あなたの【本当の使命】は、『猿の手』を回収もしくは破壊することである。
ショック:『猿の手』を所持しているキャラクター

GM:『猿の手』を回収したし破壊もしたので、【使命】は達成です。

シャロン:割と危なかったんだなぁ。

エリオット:あの時渡しておいて良かった。

アリス:実は、渡してくれなければ戦闘しかける気はあったんですよね。エリオット様はまったく賢明でいらっしゃった。

エリオット:こわっ!

シャロン:しかし、いい人物にあの啖呵を切ったな、私! 専門家とは心強い!

GM:慧眼である。シャロンは箱、開けてみます?

シャロン:はい。恐怖判定が来ても私は開けるぞGM!

GM:緑がかった灰が入っていますね。ちょっと探ってみれば、燃え残った『猿の手』の爪が混じってるかもしれません。灰が『猿の手』であるものかはわからないが……信じてみてもいいでしょう。

シャロン:「……まあ、いいでしょう。悪用さえされなければ、かまいませんわ」

アリス:大丈夫、大丈夫、アリス嘘言わない。

GM:最後に、箱がパタンと閉じられて終了です。ありがとうございました。

エピローグ2 シャロン

GM:次はシャロン?

シャロン:ですね。場所は病院です。白く清潔な布、香る薬品の匂い、そこにハリーが入院しています。秘密保持の為、権力でゴリ押しした信頼できるお抱えの医師たちを使ってハリーの治療を行ったその場所です。

GM:入院して何日くらいですかね。

シャロン:(コロコロ)……6日です。目を覚まさないハリーの横に、今日もシャロンは見舞いに来ていた。

GM:このことはナンシーは知っているんですか?

シャロン:知らせていないよ。

GM:では、世間的にはハリーは失踪扱いです。

シャロン:状態が安定してからじゃないと、誰にも言えないよ。死臭漂ってるし

GM:まぁ、そうですね。とはいえ、6日も経つと、青白い頬に少しずつ血色が戻ってきたように見えます。

シャロン:寝ているハリーの額にキスをし、花瓶の花を変える。病院のスタッフに任せず、シャロンができる事は極力、彼女自身が行っていた。それは愛の為か、或いはこの状態に持ち込んだ自身の贖罪か、それは誰にも分からないが……と、ここら辺で目覚めてもらいましょう。

GM:では、ゆっくりと目を開けます。天井を見上げながら、何度かしばたく

シャロン:始め、シャロンはそれに気が付かなかった。何しろ6日も目を覚まさなかったのだから無理もない。

GM:何か喋ろうとしたものか、こほこほと咳きこむ

シャロン:「ハリー、ハリー!? 目を覚ましたのね!?」 咳に気がついて、ハリーが目を覚ましたとわかってから行動は早い。飛びつくようにハリーに近寄る。

GM:首だけめぐらしてシャロンを見て「ここはどこだ? ……それに、あなたは?」

シャロン:「ここは都内の病院ですわ、私は……“私は”? ……ハリー? 私はシャロンですわよ?」 怪訝そうな顔で声をかけます。

GM:ぼうっとしたように。目を動かして、状況を把握しようとする。「ハリーって、僕のこと……? …………ああっ」 力の衰えた手で頭を抱える。

シャロン:「どうしたんですの?!」 服を掴んでハリーを揺するシャロン。最初、強く揺すりかけ、はっと手を離し。そっと手を添えて「……ハリー、あなたまさか記憶が……」

GM(ハリー):「……思い出せない。僕は、何をしていたんだ? 僕は誰なんだ……」 と、ここで『猿の手』の【秘密】を見直しましょう。“代償に指定できるのは、自分の所有物、人の命や魂”とあります

シャロン:命をよみがえらせて魂が消えたか。

GM:ここにいる男はただの抜け殻なのかもしれない……。

シャロン:「……。ふふ、ふふふ……そう来ましたか。つくづく私を振り回す木乃伊ですわね……! いいでしょう。 記憶が消えた? かまいませんわ。ならばもう1度、覚えなおしてもらうだけですわ!」

GM:シャロンの姿を茫然とした様子で眺めてから「あなたは、僕の何?」

シャロン:手で豊かな髪の毛を振り払う。病室に入る光を受け、髪が金色に光る。そして、自信に満ちた胸を張り言い放つ。「あなたはハロルド・ホールズ。そして、私はシャロン。シャロン・ウィンザー。大英帝国王室の血を遠くに引く! あなたの婚約者ですわ!」

シャロン・ウィンザー
【秘密】埋葬の前に、あなたは密かに棺の中のハロルドの遺体を確認している。遺体の損傷はあまりに惨たらしく、今でも夢に見ることがあるくらいだ。
だが、それでもたしかににその遺体はあなたの恋人のものだったのだ。
あなたの【本当の使命】は、ハロルドの正体と真意を探ることである。
ショック:ハロルド

エピローグ3 エリオット

GM:いやぁ、いいバッドエンド引いたなぁ。さて、最後はエリオットのエピローグですね。

エリオット:では、ちょっとアリスさんにご登場願おうかな。ただ、時間についてですけど、僕は事件後失踪したので、事件から少なくとも1ヶ月以上経過していると望ましいです。それでもいいなら。

アリス:いいですよ、登場します。

エリオット:では、事件から数ヶ月経った、霧の深い夜。ミラー探偵事務所の扉が叩かれます。

GM:カーテンを引いた窓の外は、霧で覆われてまったく視界が聞かない。

アリス:「おや、こんな時間にどなたでしょう。まぁ、私は来る者拒まずですが。人でも、魔でも、ね」 そんなことを言って1人笑いながらドアを開ける。

エリオット:扉を開けるとそこには、件の事件後すぐに蒸発したと噂されていたエリオット・ウィンザーの姿がある。髪はいくらか伸び、暗色のコートを纏った姿は、闇の中でやけに浮いて見える。

アリス:「おお! これはこれはエリオット様!」 例の芝居がかった声を喜色に染める。

エリオット:「……夜分遅く申し訳ありません。ご無沙汰しております、アリスさん」

アリス:「あれから長い間家をあけていると聞いて、挨拶もできなかったことを残念に思っていましたが、戻ってきていたのですね。いつ頃こちらに? おおっと、立ち話はいけませんね。ささ、中へ」

エリオット:「いえ、たまたま近くを通ったので、ご挨拶まで。馬車も待たせてありますし」 外には路地に妙に黒々とした馬が引く馬車が止まっている。……しかし、馬車の音などしただろうか?

アリス:「それは残念です。せっかくの再会ですのに……おや?」 ふと、表の馬車に気がついてニヤッと笑う。そこには、まさか挨拶だけじゃあるまい、という意味が込められていた。

エリオット:「今日伺ったのは、『猿の手』に関して、然るべき対処をしていただきながら、何のお礼にも伺っておりませんでしたので。そのお礼と……後は、あなたにくらいは話しておこうと思いまして。僕の思春期の迷走について」 冗談めかして笑う。

アリス:応えるようにニヤッと笑うと「お聞きしましょう」

エリオット:「僕の中には、とても汚い面があるんです。それは以前から自覚していましたが……墓地でハロルド・ホールズと相対したとき、それをはっきりと理解しましてね」

アリス:ドアにもたれかかりながら聞く姿勢を取ります。

エリオット:「僕、ハロルドさんのことが嫌いだったんです。いや、憎いと言ってもよかったかな。姉さんを遠くに連れて行く彼のことが、たまらなく疎ましかったんだ」 【秘密】を公開します。

エリオット・ウィンザー
【秘密】今さら戻って来て、なんのつもりだ?
この2年間ずっと、誰よりもシャロンに寄り添い支えてきたのは、ほかならぬあなたなのだ。
あなたの【本当の使命】は、次のいずれかである。導入フェイズ終了時までに選択すること。
・セッション終了時、シャロンのあなたへの「感情」が「愛情」であること。
・ハロルドを排除すること。
《恋》で恐怖判定を行うこと。
エリオットにプラスの「感情」を持っていないキャラクターは《恋》で恐怖判定すること。
ショック:ハロルドおよび、情動分野の特技に【恐怖心】を持つキャラクター

アリス:うわー。

シャロン:えぇぇ。

GM:まあそういうことです。この【秘密】で、【本当の使命】はシャロンからの「愛情」をとる方が選ばれています。

シャロン:まさか姉ちゃん愛されてた。

GM:さっきのアリスの手紙は察しが良すぎた。

アリス:ことによると、とは思った。

シャロン:この使命で最後に譲るのが弟の愛だわ……。

エリオット:エリオットは訥々と語ります。

「あの男は、僕にないものを全て持っていました。男らしくて、落ち着いていて、あの破天荒な姉を導くだけの精神を持ち合わせていた。僕は完全な日陰者です。あの変わり者の姉は、僕が守らなくてはと、そんな思い上がりを抱いていただけに……彼の登場は、僕そのものを大いに揺るがしました」
「だから、彼に刃物を向けた時、たまらなく感情が昂ぶりました……同時に、僕がどれほど最低なやつかを、思い知ることにもなりました」
「……ハロルド・ホールズは、結果として助かったそうですね。“彼そのもの”は消えてしまったとしても、姉さんならば折れることもなく、自分の手で幸せを掴み取ることでしょう」
「では、僕は? 独り善がりを増長させて、ここまで来た自分に何ができるのか……そのヒントをくれたのは、皮肉にもあの呪われた干物でしたよ。医学では、あの呪いに及ばない。その呪物でも、人の命は救えない。では、その狭間であればどうか?」

アリス:その言葉に、私の目もキラリと光る。

エリオット:「学究の粋と、超常の存在、その両方を等しく知り、納めることで、あの忌々しい呪いにも、打ち勝てるのではないか? 人の力で、この僕の力で……そんなことを言えば、あの姉は絶対に協力してくれようとするでしょうからね」

アリス:もっともだ、という風に笑ってみせる。

エリオット:「それではダメなんです。彼女は今度こそ、彼女の幸せのためだけに生きなくては。彼女にこれ以上、負担はかけられません。それで、失踪まがいの家出とは、ほとほと僕も……不出来な弟です」 そうは言いつつ、その笑顔は晴れやかである。

アリス:「くくっ、エリオット様は、実に業が深く、わがままで……そして、面白い方ですね」

エリオット:「今までずっと、できもしない“いい子”を演じてきたのです。少しくらいの業突く張りも、許されると思いません?」

アリス:「ええ、私好きですよ、そういうの」 楽しそうにニヤッと笑う。

エリオット:「……いつか、僕が僕の望むだけの何かを手にするまでは、あの家はあけたままです。だから、今日は依頼をひとつ」

アリス:「ほう」

エリオット:「あなたの目の届く限りでかまいません。どうか姉さん……姉夫婦に、怪異の手が及ばないようにしていただきたい。報酬は、そうですね……こうしたものを、ちょくちょくお送りいたしましょう」 両手で持てる程度の箱を渡します。

アリス:「……開けても?」 受け取って。

エリオット:「ええ。どうぞ」

アリス:では、開けます。

エリオット:あけると、中には異質な空気を放つアクセサリー、石など、一目見てヤバそうな何かが詰められております。

GM:刻印の刻まれた黒い石とか。

エリオット:文字の刻まれた古そうな金色の指輪とか。

GM:いやあ、半年でこれかぁ。有能だなあ。

アリス:「ほう、これは中々……」 石を1つ取り、興味深そうに眺める。

エリオット:「とても風情のあるものとはいえませんが、どうでしょう。そこそこ退屈しのぎにはなるのでは?」

アリス:「結構でしょう。では、これを向こう1年の契約料金とします。面白い話を聞かせていただいたので、特別サービスです」 ウィンクしながら。

エリオット:「おっと……では、年間契約更新のために、僕も頑張らなくては」

アリス:「お互い、頑張りましょう。ちょっとお待ちください」

エリオット:「?」

アリス:すっと背を向けると、「これは正当な契約です。なので、契約書を作りましょう。……特別なやつを、ね」 振り向きながらニヤッと笑った。

エリオット:「こういうケースになると、なかなか、趣のある響きですね……」

アリス:さらさらと契約書を書き終えると「これで、私とエリオット様の契約は確実なものとなります」

エリオット:「……では、僕はこれで。もし姉さんに何か突っ込まれても、上手くはぐらかしておいて頂ければ幸いです……あ。あと……」

アリス:「何でしょう?」

エリオット:「んー……いや、はい。言いましょう……“-----”」 意を決したように英語ではない奇妙な言葉で何か言います。……まぁ、つまりそういう意味です。「ふふふ、ではまた。今度はもう少し、見るところのあるヤツになって帰ってきます」

アリス:面食らった表情でエリオット様の顔を見ます。

エリオット:「さようなら、探偵さん。僕と姉さんは、紛れもなくあなたによって救われた」 身を翻して去りましょう。

アリス:「ふーむ……」と少し考えると、「お待ちくださいエリオット様。私からも、贈り物をさせて下さい」と声をかける。

エリオット:「……?」 振り返ります。

アリス:「これからの旅の餞別として、1つの魔法を」 エリオットが振り向いた瞬間、彼の腕をぐいと引き寄せ……頬にキスをする。

エリオット:「!」

アリス:「旅の安全と、無事の帰還を祈る……最も安っぽい魔法です」

エリオット:「……や、やっぱり、ヒンディー程度じゃバレましたか」 赤くなってそっぽを向く。

アリス:「では、またお会いしましょう」

 アリスはそれだけ言ってニヤッと笑うと、中に入って扉を閉めてしまった。……エリオットはしばらくアリスに敵いそうにない。

●功績点
アリス 8点(発見、参加、RP、使命、プライズ、琴線1…エリオット)
シャロン 6点(発見、参加、RP、使命、琴線0)
エリオット 6点(発見、参加、RP、プライズ、琴線2…アリス、シャロン)

インセインリプレイ『最後の願い』 了

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