お仕着せのハッピーエンドに、抗え。
こんにちは、ぬえのです!
本日は冒険企画局謹製のTRPG「ブラッド・ムーン」のサプリメント「ギルティ・ウィッチーズ」のレビューです。
概要
「二兆円ほしい」「体重を気にせず焼き肉を食べたい」「ひたすらに暴力を振るいたい」「あの子とずっと一緒にいたい」
人が心の中に「叶えてはいけない」ものとして密かに抱える薄暗い願望【背徳】
全身を可愛らしいフリっふりな衣装で包んだ、砂糖菓子の甘い香りを漂わせる魔女の目的は「人々の【背徳】が叶えられるように手助けしてあげること」
お金がほしい人には、銀行強盗ができるだけの力を与え、体重を気にする人は気にしなくてすむように食べれば食べるほど痩せる魔法をかけ、
暴力を振るいたい人には生贄を用意し、誰かの恋心を叶えるために想い人の心を書き換え。
魔女の心からの善意により満たされる【背徳】によって砂糖菓子にまみれながら破滅していく世界を護るため、プレイヤーは「魔女狩人」としてお化粧道具や料理道具、噂話に拷問器具や薬物等のオシャレな得物を手に可愛らしいガーリーで甘やかな死闘に身を投じることになります。
ちなみに、魔女は主に年頃の少女から「なんとなーく」発生し、人間に戻る方法はありません。魔女狩人にできることは、滅ぼすのみです。
魔女狩人
魔女狩人になるために必要な素質は、人より【背徳】的な願望が強いこと。
彼女達は人々が背徳的な願望を満たしてしまわないようにするために戦いながら、自分達も魔女の誘惑に抗い続けることを強いられます。
魔女はPCの【背徳】を満たすために、そっと背中から耳元で囁き、ほんの少しだけ友好的に親切に背中を押してくれます。
「オーバードーズしたいなら、その手にある注射器を自分に刺すだけでいいんだよ」
「いじめっ子に復讐できるだけの力が今のあなたにはあるよ」
「あいつが死んじゃえば、あの子はずっとあなたのものだよ」
叶えてしまえば、狩人の世界は破滅する。だけど叶えることを望まずにはいられません。
魔女の誘惑に負け【背徳】を満たしてしまえば、今度は狩人が魔女に堕ちてしまうかもしれません。
ルールの特徴
「PCにとって最も重要なモノ【幸福】の破壊を狙ってくる怪物と戦い、その過程で重要なモノに関わるRPや破損された時の負けロールのための設定の積み上げ」
等、熱くダークでPCに焦点を当てたロールプレイが、システマチックで明確で進行しやすいシーン性のリソースの奪い合いを通して誰でも気軽に遊べる「ブラッド・ムーン」
のサプリメント「ギルティ・ウィッチーズ」は堅牢で軽快な上質な遊び心地はそのままに、上から薄暗く瀟洒でガーリーで甘い砂糖をバケツいっぱいにぶちまけてコーティングしたようなフレーバーと【背徳】のルールが特徴的。
叶えてはいけない願望【背徳】に焦点を当てたことで、倒錯的で破滅的なダークなやり取りとそれに抗うヒロイックな克己心を魅せるシーンがたっぷりと楽しめます。
「でも、ガーリーとか百合は詳しくなくて」と躊躇うかもしれませんが、
『甘くてガーリーで背徳的』なフレーバーを補強するための世界観や武器等が、やや癖が強くてともすれば照れて脱線しがちな内容をばっちりフォローしてくれます。
甘やかなフレーバーの中でも代表的なのが「概念戦闘」のルール!
狩人の心の闇を甘く蕩かす魔女との戦いは愛らしい「概念戦闘」として行われます。
お菓子の魔女が相手なら、破損した部位はお菓子になります。
刺された部位がクッキーになり、ちぎれた部位はキャンディーとしてばらまかれ、こぼれる血はミルクに。
恋の魔女が相手なら、壊された部位は恋をしてしまいます。
つまり、戦闘のフレーバーをそれっぽく書き換えているだけで、データ的には【心臓】や【脚】が破壊されているのですが、これが凄く楽しい。
まとめ
元のルールが保証しているしっかりとした遊び心地に、好きな人にはたまらないテクスチャとデータを追加したサプリメント。
やや癖が強いので、最初に「こういうゲームです」「こういう風になります」「皆さんは世界で最高の美少女です。お隣もそうです」
と卓のメンバーとコンセンサスを取っておくと、より快適に楽しく遊べます。