- はじめに
- 逢魔人紹介&導入フェイズ
- メインフェイズ:第1サイクル
- 第2サイクル
- 第3サイクル
- クライマックスフェイズ&エピローグ
メインフェイズ 第1サイクル
マスターシーン シャロンとハリー
GM:第1サイクル、最初のシーンは先に言った通りゲストであるハリーの手番です。ルルブにもシーン表はありますが、今回は特別に用意したオリジナルのシーン表を振ります。シーンは(コロコロ)……“少し疲れてしまったようだ。落ち着ける場所でひと息つきたい”ですね。
エリオット:GMの芸が細かいなぁ。
GM:さて、ハリーはシャロンに感情判定したいんですよね。シャロンがハリーの家に来るのと、こっちから出向くのどっちがいいですかね? どこか別の場所でもいいですが。
エリオット:あっ、僕もシーンに出たいんだけどいいかな。
GM:かまいません。それじゃあ、こちらからウィンザー家に出向くほうがいいですね。2人が出やすいですし。
シャロン:ハリーのところに突撃しようとする私を、エリオットがどうどうって諌めてたら向こうから来たって感じかな。
GM:じゃあ、身なりを整えて……昼ごろに訪ねたってことにしましょう。弟の制止を振り切ろうとしているシャロンのもとに、メイドがお盆にカードを乗せて持ってきます。ハリーの筆跡で“会えないか”と書かれています。メイドの話では、ハリーは門の前に既に来ているということです。
アリス:メイドも気味が悪いでしょうねぇ。
シャロン:「好都合ですわ! 直接会って、ハリーが本物か確かめてみますわ!」
GM:親もなだめていそうではあるが、関係ないですかね。
エリオット:親の威厳とはいったい……。
シャロン:親が言って聞くようなら、こんな奇天烈になってない。
エリオット:くそっ正論なんて卑怯だぞ。
GM:ともあれ、メイドに連れられてハリーは、客間的なところに通されるかな。よく清掃の行き届いていて、調度品も年期の入ったものだけど……シャロンのセンスでやや奇抜なものもあるのかもなぁ。
シャロン:自分の好みのものは、自室にしか置いてないよ!
エリオット:自室に姉以外の人物が入ると【正気度】にダメージが?
シャロン:ちょくちょく見た目が変わるマネキンが、部屋に入ってすぐのとこにいるくらいはあるかな。
アリス:彼女の部屋には入らないようにしよう。
GM:それでは、テーブルとソファのある落ち着いた部屋で、黙してソファに座っていたハリーは、2人の姿を見てとシャンと立ち上がります。
シャロン:「よくぞ来てくださいましたわ、ハリー!」 ババーンって扉開けて、テーブルを挟んだ向かい側のソファに座る。
エリオット:「姉さん、お静かに」 後に続いて入ります。僕は姉さんの後ろに立っていよう。
シャロン:弟の言葉を聞かないふりをして「それでは、あなたの言い分を聞きましょうか! ハリー、ハリー!」 身を乗り出してハリーに詰め寄る!
GM(ハリー):「変わらないな、シャロンは……。エリオットも、久しぶりだ」 ハリーは再びソファに腰を掛けると穏やかに言います。
エリオット:「……お久しぶりです」
GM(ハリー):「申し開きは……すまない、2年も留守にして勝手だと思うけど、今は……なにも言えない」
シャロン:眉をぴくっと動かし……ため息をついて「でしたら、今は何も言いませんわ。勝手なのは私も同じですしね! それで、今日はどんな用事で?」
GM(ハリー):「君の姿を見ておきたかったんだ。昨日はすぐに別れてしまったし」
シャロン:「……」 とっても嬉しそうな表情になっちゃう。
GM(ハリー):「2年のうちに何が変わって、何が変わっていないのか、確かめたいんだ」
エリオット:「……ハリーさん、2年もあれば多くのものが変わります。……お父上の件、お悔やみ申し上げます」
GM(ハリー):「ありがとう。僕もはっきり言って、状況がまだ呑み込めていないんだ。帰ってきたら父は死んでいるし……母は僕の姿を見て卒倒しかけてしまうし」 本当は卒倒しました。
エリオット:死んでるはずだったんですから、そうでしょう……という言葉は飲み込む。
シャロン:黙ってるつもりだったけど、我慢できないという様子で、「あなたは今、周りの状況をどれくらい知ってますの?」と聞いてみる。
GM(ハリー):「……僕は死んでた。死んでいたことになってた。まさか自分の墓を自分で見ることになるとはね」
シャロン:死んだ自覚はないのか。ふーむ?
GM(ハリー):「シャロン、君はどうだった、この2年で」 目を合わせて語りかけます。そこには、彼女は変わってしまったのだろうかという不安が感じられます。ここで、《情景》で感情判定します。
シャロン:おお、よしこい。
GM:それでは(コロコロ)……6で成功したので、【誘惑】の使用を宣言します。指定特技は《恋》です。
シャロン:《におい》から9(コロコロ)……7。無理かぁ。
GM:では、シャロンからハリーへの感情は「愛情」を指定します。ハリーからの感情はランダムで(コロコロ)……「共感」ですね。あと、【誘惑】の効果で【居所】ももらいます。ハリーの【居所】も渡しておきましょうか?
シャロン:欲しいな。
GM:じゃあ渡しておきます。エリオットは欲しければ姉からもらえばいいでしょう。
エリオット:イエス、ボス。
シャロン:では、ハリーの思いに応えるように「私は私ですわ! 2年も放置した責任は、これから取ってもらいますわよ!」と胸を張る!
GM(ハリー):「本当にすまない。落ち着いたら、きっと食事に誘うよ。だから、待っていて欲しい。……母が心配だし、今日はこれで失礼するよ。会えてよかった」 ソファから立ち上がります。
シャロン:じゃあ最後にすっとテーブルの反対側へ移動して、ハリーの頬にキスして「食事、楽しみにしてますわ!」と笑顔を向ける。
GM:ハリーはびっくりした顔でシャロンを見ますが、ふっと笑みを返すと一礼してさっていきます。これで、ハリーのシーンは終了です。
1-1 シャロン 姉と弟
GM:次、シーンをやりたい人はいますか?
シャロン&エリオット:はーい
エリオット:あ、被ったか。だったら姉さんが先でいいですよ。
GM:では、シャロンのシーンにいきましょう。どのようなシーンにしましょうか?
シャロン:じゃあ今のシーンから「これからアリスさんの事務所に行きましょう!」ってところまでつなげたいんだよね。アリスの事務所の場所は既に知ってるってことでいいかな? そうすると、今後アリスも登場しやすいし。
アリス:なるほど。ダミアンさんの事件の調査依頼を受けたから、その関係で互いの顔は知ってると思いますし、それで大丈夫ですよ。
シャロン:ありがとう。今回はシーン表は振らないで、さっきのシーンの続きということで客間から始めるよ。それで、エリオットに感情判定をしたい。あと【ダウジング】も使いたい。
エリオット:じゃあ、そのまま僕もいますか。
シャロン:お願いします。とりあえず【ダウジング】するよー。(コロコロ)……4。失敗だけど、まぁ1回くらいなら問題ないな。
GM:いつもなら囁きかけてくる直感が上手く働かないのでしょうね。
エリオット:まぁ、姉さんも内心穏やかとはいかないでしょうから……と好意的に取る。
シャロン:ハリーが去った後、「どう思う? エリオット」と何事もなかったように、エリオットの横に戻ってきて座ります。
エリオット:「どう、とは?」
シャロン:「ハリーの事よ! あれは何? 何が起きてるとあなたは思う?」
エリオット:「……医学的な見地から言えば、当然ですが死者が生き返ることはありません」
シャロン:そっと、エリオットの腕に手を置いて「そうね、彼は死んでいたわ。でも、私の目にはまさしくハリーだと見えたわ」
エリオット:「考えられるとすれば、ご両親が確認したハロルドさんの遺体は、彼のものではなかった……」
シャロン:「それが妥当よね……」
エリオット:「事故後の手続きや調査から考えれば、そんなことはありえないんですが。そう考える以外に、彼の生存は説明できません」
シャロン:「でも……ダミアンさんやナンシーさんが息子の亡骸を見間違えるなんて、ありえるかしら……私達が彼を本物のハリーと思い込んでいるだけかもしれないわ……」
エリオット:「…しかし、姉さんは彼を本物だと感じた。そうでしょう?」
シャロン:「ええ……私は、どうすればいいのかしら……」 ここで感情判定をしましょうか。近づいた時に香る香水や、姉の香り的なもので《におい》の判定をかけます。
GM:なに弟を誘惑してるんですか(笑)
シャロン:誘惑なんてしてないわ。相手が弟だから信頼してるだけよ! というわけで判定(コロコロ)……6で成功! 感情表を振って(コロコロ)……「共感」を取ります。
エリオット:それじゃあ、僕も(コロコロ)……「共感」か「不信」か。さすがにここで「不信」とかウソだろなので「共感」で。
アリス:共感するところがあるのか、この姉弟。
シャロン:ハリーに対する気持ちとかじゃない?
エリオット:なるほど、確かにそこは共感してるかも。
シャロン:それでは続きを……そえられた手が唐突にぎゅっと握られます。もうそれは逃がさないわといわんばかりに。
エリオット:「!?」
シャロン:「気になるなら、調べるしかないわよね?」 キラキラした目。
エリオット:「……その、ですね。この件はきっとしかるべき機関が正当な調査を……」
シャロン:「何言ってるのよ。その正当な機関が、彼はハリーじゃないって言ってもあなたは信じられるの?」
エリオット:「それは……」
シャロン:「私は信じられないわ。だから、私たちの方でも調べるのよ。さぁ、あなたも準備なさい。誰か、私たちは外に出るから馬車を用意して!」 部屋の外にいる使用人に向かって叫ぶ。
GM:シャロンの声を聞いて慌ててきた使用人がバタバタと準備をしています。しばらくしたら馬車が用意されるでしょう。ちなみに馬の維持費って結構かかるので自分ちで馬飼って馬車もあるとなると結構裕福です。
エリオット:「……そうですね。わかりました。どのみち、姉さんが座って待つなんて期待してはいけなかった……」 後半はぼやきながら姉さんについていきます。「ところで、出かけるってどこに行くんですか」
シャロン:「ダミアンさんが亡くなった時にナンシーさんが調査を頼んだ探偵がいるから、その人のところへ行くわ!」 そのままぐいーって引っ張っていきます。振り払えばエリオットなら振り払えるかもしれないが、振り払わないその手は、まさしく共感の証だったと。
GM:姉弟は馬車に乗り込み、慌ただしく出発していく。1人の探偵のもとへ……ということでシャロンのシーンを切りましょうか。
アリス:さぁ、こい!
1-2 エリオット エリオットと探偵
GM:さて、次のシーンはエリオットかアリスになりますが。
アリス:あ、私は最後でいいですよ。
エリオット:だったら、僕がやろうかな。
GM:それでは、エリオットのシーンにしましょう。どういうシーンですかね。
エリオット:アリスさんに感情判定をしたいので、場所はアリスさんの事務所ということでお願いします。ところで、事務所の場所は?
アリス:10番街の裏通りの入り口、右手の古びた2階建て建物。外の階段を上がった2階の小さな部屋に間借りして事務所にしてます。1階には陰気な顔のおばさんが住んでいます。今適当に決めました。
エリオット:では、先ほどのシーンから引き続いた形で、件の事務所の近くで馬車を止めてもらいましょう。もうお互い顔見知りなんでしたっけ。
アリス:そういう話でしたね。きっと、ダミアン氏の調査のために、ウィンザー家にも訪ねて来ていて、挨拶程度はしているんでしょう。
GM:そうですね、それとダミアンの死について調べていることまでは知っていていいでしょう。さて、表の掃き掃除をしていた陰気な顔の寡婦は、日当たりの悪いこの場所に似つかわしくない2人に向けて、胡散臭そうな視線を投げかけています。
シャロン:視線を全く気にせず、騒ぐこともなく優雅に馬車から降ります。
エリオット:おばさんに軽く会釈しつつ「姉さん、ミラーさんの事務所は2階です。足元に気をつけてください」 先に錆びた階段を上がっていきます。
シャロン:じゃあその後を軽快に上がっていこう。気をつける? ノープロブレム。
エリオット:階段を上がって事務所の戸のドアノッカーを……あるんですか?
アリス:ないです。
エリオット:では直接コンコンやろう。
GM:薄っぺらいドアはどこか空虚さをともなって音を立てる。
アリス:「鍵は開いている! 入りたまえ!」 中から軽快だが、芝居がかったように凛とした声が聞こえてくる。
シャロン:「入らせて頂くわ!」 張り合う!
エリオット:「……失礼します」 ドアを開けます
アリス:やや立て付けの悪いドアは、ギィーと音を立てて開きます。部屋の中には、大きな机の上に腰を掛け、書類を眺めている男装の麗人。机、椅子、ランプ、衣服、狭い部屋に似つかわしくないほど高価と見える。
GM:男装は別に余所行きの服装ってわけでもないんですね。
アリス:はい、始終男装です。ノリの効いた黒いスーツを着て、部屋の隅の帽子掛けには、先日の葬儀の際に被っていた山高帽がかけられています。
エリオット:「失礼します、ウィンザー家のものです」
アリス:「なるほど、今日のお客様はウィンザー家の……おお、ウィンザー家のご姉弟でしたか。よくぞ我が事務所へ。お入りください」 書類から顔を上げてお得意の“ニヤッ”だ。
エリオット:部屋に入って「突然の訪問で申し訳ありません」
アリス:「なに、私は来る者拒まずですから、歓迎いたしますよ。ただし、お茶の用意がないことは悪く思わないで」 机から跳ねるように降りると、そのままの勢いで2人の前に移動し、丁寧なおじぎをします。「このような辺鄙なところへ、ご足労ありがとうございます。シャロン様、エリオット様」
GM:芝居がかってるなぁ。
シャロン:それには優雅な挨拶で返しますわ。そこでお嬢様タイム終了して、勝手に椅子に座って聞く姿勢に入ります。
エリオット:「どうも。ええと、用件は……既に勘付いていらっしゃるでしょうけが」 僕は立ったままかな。
アリス:「ダミアン・ホールズ氏の怪死事件ですね?」 またニヤッと笑い「それに、ハロルド・ホールズ氏の復活」
エリオット:「……ええ、そのとおりです。これらの事件の異常性、あなたであれば何か見えるものもあるかと思いまして」
アリス:「わかりました。まずはエリオット様も椅子にお掛けください。……さて、調査は進んでおりまして、私から話せることも多々あるのですが、せっかくお越しいただいたお2人のお話も聞いてみたく思います。お2人はホールズ親子とはお知り合いでしたね?」
シャロン:「ハリーとは許婚よ」
アリス:「結構」 机に立てかけてあったステッキを手に取ると、床を叩いて調子を取りながら部屋の中を歩きまわり始める。
GM:下の階から、おばさんの不満げな声が聞こえてきます。
エリオット:怒ってる(笑)
シャロン:「いつもやってるの? それ」 ステッキを指さす。
アリス:「今日は特別サービスです」 ニヤッ。
シャロン:「なら不要よ。話中に殴りこまれたら堪らないわ」
アリス:肩をすくめて、立ち止まると、2人に身体を向けて「お2人の目から見て、ダミアン氏、ハロルド氏が死亡、あるいは失踪する前、両氏に関して何か気になる点はありませんでしたか?」
エリオット:どうなんだろう?
GM:じゃあ、ダミアンは何か悩みがあるようだったということを知っていてもいいでしょう。ただし、具体的なことは知らないです。時たまウィンザー家を訪ねていたかもしれないですね。
エリオット:「父と話しているのを耳に挟んだ程度ですが、何か……少し悩み事があるような、そんな印象を受けました。確かではありませんが」
アリス:「なるほど。では……」と演出として2、3個の質疑応答をしたことにしよう。
エリオット:じゃあ、少し話した後に「ミラーさん、ダミアン氏の怪死という事件が現在ミラーさんの職務であると知った上で、お願いさせていただきたい」
アリス:「私のことはアリス、と気軽にお呼びください。お願いとは?」
エリオット:「では、アリスさん。2年前の死亡事故と、今帰ってきたハロルド・ホールズについての調査。タイミングから考えて、単なる遺体の取り違え、家出人の帰宅だとは思えないのです」
アリス:もっともだというように頷いて続きを促します。
エリオット:「先ほど話した限り、確かに彼はハロルド・ホールズその人でした。しかし、死者は蘇らないのは世の道理。ハロルドは姉の夫、僕の義兄となる人物でした。もし、もしも他者のなりすましや、悪意による事象だとしたら……許しておけない」 その目は15歳の少年のものではない。
シャロン:その台詞を言った弟を真顔でじっと見る姉。
エリオット:ここで感情判定をしましょうか。《第六感》で判定して、アリスさんが信頼できるか見極めます。
GM:わかりました。では判定をどうぞ。
エリオット:(コロコロ)……7で成功です。
GM:感情表を振って感情を決めてください。
エリオット:(コロコロ)……「愛情」か「妬み」……は?
アリス:私も(コロコロ)……「忠誠」か「侮蔑」……まったくこれだから感情表は。
GM:なんじゃこれ……感情を決めてください!
アリス:「忠誠」ですね。エリオット様の強い意志と聡明さに敬意を払うという意味合いです。
エリオット:僕は「妬む」意味もわからんし……貴族の着飾った女性ばっか目にしてるから、自分の仕事に自信を持って社会と向き合うアリスさんに対する漠然とした……。
GM:「愛情」を。
エリオット:……ですね。「愛情」でとります。大丈夫、「愛情」といっても種類はさまざまなのさ……。
GM:そうですね。
エリオット:きっと、自信に満ちたその背中を無意識に目で追ったりするんでしょう。どうしてこんなことに。
アリス:感情表の悲喜劇ですね。
エリオット:超絶自信家という点において姉の影を見ている可能性が……いややっぱダメだこじれる。
アリス:さてと、私はエリオット様の目に答えるように、真剣な表情を見せ、「私もハロルド氏の復活は尋常のこととは思っていません。仰る通る、ダミアン氏の怪死に関わりがある可能性も十分にあるでしょう」
エリオット:黙って頷きます。
アリス:「2つの事件は何とも奇妙です。しかし、奇妙である故に興味深い。この事件、このアリス・ミラーの手に預けていただけるのであれば」 ここで片膝をついて、エリオット様の手を取ると「少なくとも、私に任せて間違いはなかったと思わせてみせましょう」
エリオット:「……ありがとう。あなたを頼りにしたのは正解でした。どうか、よろしくお願いいたします」
GM:それでは、ここでシーンを切りましょう。さぁ、探偵の仕事の始まりだ。
1-3 アリス 探偵の仕事
GM:第1サイクル最後のシーンプレイヤーはアリスですね。どんなシーンにしましょうか。
アリス:ダミアン氏の【秘密】を探りたいと思います。
GM:登場は、自分だけですか?
アリス:全員登場にしましょうか。さっきの続きです。ちょっとしたネタを仕込みたいんで。先に判定しちゃいますね。
GM:どうぞ。
アリス:《物音》で5。5なら余裕っしょー(コロコロ)……5で成功! セーフ!
GM:演出はどうします?
アリス:【秘密】を見てからのほうがやりやすいんで、先に【秘密】くれますか。
GM:わかりました。こちら拡散情報となっておりまーす。
ダミアン・ホールズ
【秘密】拡散情報。2年前、あなたは『猿の手』という呪物を手に入れ、どんな願いも叶えてくれるというそれに「借金を返すため金が欲しい」と願った。
すると、ハロルドの事故死によって賠償金が手に入り、願いは叶ってしまった。そして今、病気で自らの命が長くないと悟ったあなたは、再び『猿の手』に願いをかけることにした。
あなたの最後の願いは「自分の命と引き換えにハリーを返してくれ」というものだった。《哀しみ》で恐怖判定を行うこと。
ショック:怪異分野に【恐怖心】を持つキャラクター
アリス:あちゃー。
GM:さらに“ダミアン・ホールズ記す”として、
ダミアン・ホールズ記す
話は今から二年前にさかのぼる。
私は印度帰りであると自称する日に焼けた顔の行商人に出会った。偶然にも、酒場にて相席することになったのである。その男は私に「お守りを買わないか」と持ちかけた。なんでも、印度の霊験あらたかな行者が祈りを込めた正真正銘の秘伝の品であるという。そう言って見せたのは干からびた獣の手の木乃伊であり、彼曰く『猿の手』なのだそうだ。その木乃伊は、どんな願いであっても、3つまで叶えてくれるというのだ。
酒に絆されて、我々は長いこと話していた。男は『猿の手』にまつわる逸話やら冒険をいくつともなく語った。そして店を出て別れるときには、私は二束三文でその木乃伊を購入していたのだった。実のところ、彼本人でさえ、自分が語った内容を信じていたとは思われない。
その出来事から少し経ち、私は事業の失敗から借金をこさえてしまっていた。そこで思い出したのが、『猿の手』である。「どんな願いでも叶う」というのだ。願いをかけてみても悪くはない……。あくまで戯れにすぎないという気持ちで、私は……願ってしまった。「我に金を与えたまえ」と。
私が願い事を口にしたとき、『猿の手』は私の手の内でぬるりとうごめいた。気のせいではなかったと今ならば断言するのだが、そのときはそうは思わなかった。不吉な感触だけが手に残っていた。
その後に起こったことは……思い出したくもないことだ。借金はなくなった。我が子が死に……そのために支払われた賠償金の額は、ちょうど借金を返せる分だけあったのだ。
これを読む人にはそんなことは偶然だと思われるかもしれない。だが、私はそうは思えないのだ。
そして今、私は死に瀕している。用心すれば永らえることもできようと医者は嘯くが、気休めにすぎないことはわかっている。病は治らない。遠からず、私は死ぬのだ。もとより、将来に希望もありはしない。
この命をなにかに使えないものかと、私は考えた。ずっと密かに隠していた『猿の手』の木乃伊を眺めながら……。
答えは出た。我が命と引き換えに、我が子をこの世に戻したまえ。
それが私の最後の願いである。
GM:という手記の内容を知っていてかまいません。さて、まずは《哀しみ》で恐怖判定を。
アリス:《第六感》から7。これ失敗したら恥ずかしいな(コロコロ)……8で成功。よーし。
シャロン:《芸術》から7で(コロコロ)……4で失敗……。エリオットは感情修正いりますか?
エリオット:《第六感》から7で近いんで大丈夫なはずです、はずです。(コロコロ)……4……。
GM:あるある。
エリオット:大丈夫じゃなかったよ。
シャロン:感情あっても無理だったね。
アリス:「お守り」切りますか?
エリオット:正直、まださじ加減がわからない。
アリス:【狂気】1枚くらいなら、まぁいいんじゃないかなぁ。
エリオット:それじゃあ、引いておきます。
GM:エリオットは引いたカードの確認をしておいてください。では、演出を続けましょうか。
アリス:では、「さて、ここからは私の知っている話をしましょう。実は手がかりなどもいくつか手に入れていましてね。さて、どこから話しますか……」 今度はカカトを鳴らしながら部屋を歩き回ると、思い出したように「ちなみに、これは考える時の癖です」 シャロンに向かって言います。
シャロン:「面白い癖ねぇ」
アリス:と、ブツブツ言いながら歩き回っていると、階段を強く踏み鳴らし、2階に上がってくる足音。
GM:おばさーん!
エリオット:あっ……。
アリス:アリスがおやと思いながらドアの方を向くと、怒りを露わにしたようなノックの音!
GM:ガンガン!
シャロン:「下のおばさんが来ちゃったじゃないの! どうすんのよ!」
エリオット:「あの、アリスさん? 何やらお怒りのご様子なのですが……」
アリス:「ああ、いつものことなので、気にしないでください。気になるなら、静かにするように頼みますが」
GM:人の神経を逆なでするようなことを!
アリス:「ん……ノックの音? ……おお、そうだ! まずこの話からするとしましょう! つい昨日のことです、私はこんな手記を手に入れました……」 と前ふりしてから上の話を、『猿の手』の逸話(元ネタの小説の物語のことです)を交えながら話します。
シャロン:「脈絡ないわね!?」いきなりの話に驚くけど、『猿の手』の逸話を聞いて黙ってしまう。
エリオット:「……まさか、そんな」
シャロン:「……そんな事でダミアンさんは死んだっていうの? 冗談じゃないわ! 冗談じゃ……」
アリス:「オカルトだと思いますか? しかし、符号は奇妙に一致する」 ニヤッと笑って、シャロンの顔を見る。
シャロン:「そうね、一致するわ……それで、その3つ目をかなえていない『猿の手』は今、何処にあるの……?」
アリス:笑顔を崩さず「それは……」
シャロン:無言でアリスをじっと見ます。
アリス:「くくっ、私にもさっぱりです」 今度は心底可笑しそうに笑いを噛み殺した。
GM:さっぱりかよ!
シャロン:「……はぁ、そっちは冗談にして欲しいわ」
エリオット:「ア、アリスさん……」
アリス:「大丈夫、ダミアン氏の手記が何よりの手がかりです。さぁ、調査を始めましょう! 難事件もたちどころに解決! 私の名はアリス・ミラー! 職業は探偵です!」 歌うような調子で言い切ると、ステッキを鳴らしながらドアを開けた! ……ドアの向こうには真っ赤な顔したおばさんが立っていたことは言うまでもない。
エリオット:何故こいつに「愛情」を……。
GM:運命。と、いうわけでここでシーンを切りましょう。ところで第1サイクルの終了時に、ハリーの手元に妙なものが現れます。
ハロルド・ホールズ※2
【使命】このハンドアウトの【秘密】はハロルド自身の【秘密】と同様にあつかう。
このハンドアウトを受け取るとき、「情報共有」は発生しない。
このハンドアウトの【秘密】は『ハロルド・ホールズ』の【秘密】を知っているキャラクターしか見ることができない。
シャロン:んむ?
GM:ハリーの2枚目のハンドアウトです。それでは、第1サイクルはここで終了です。